日本草地学会誌
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放牧草地の養分循環と施肥管理法に関する研究 : I.窒素,りん酸,カリの循環の概要と窒素循環モデル
袴田 共之平島 利昭
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1978 年 24 巻 1 号 p. 48-56

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抄録
放牧による施肥試験の結果にもとづき,窒素,りん酸,カリの循環の概要を考察し,窒素循環モデルを作成し,現実データとの適合性を検討した。1.放牧試験の結果,K単用に対して,NPK施用によって,牧草生産,家畜生産の両面から生産性の向上が認められた。2.窒素,りん酸,カリの循環について,1)循環量は現存量の多少に支配された。循環量に対して,2)搬出率は窒素;14〜16%,りん酸;3.5〜4%,カリ;12〜14%であり,3)ふん尿による還元率は,窒素;46〜53%りん酸;58〜65%,カリ;47〜55%であった。3.NPK施用の効果は,りん酸を制限要因から解除し,窒素の不足を補い,かつ,ふん尿の高濃度集中還元による効果の低下を補ったことによると解釈された。4.放牧牛,イネ科牧草,マメ科牧草,ふん,尿,土壌からなるコンパートメントモデルにもとづき,連立常微分方程式による窒素循環モデルを設定した。モデルの係数とパラメターは,一部は実験値にもとづき推定し,他は経験的に与えた。数値計算の結果は,主要部分の実測値と良好な一致をみることができた。5.モデルにより,放牧1年目の土壌に対する窒素収支を計算した結果,ふん塊中窒素の放出が遅いことにより可給態としての窒素還元量が少なかった。
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© 1978 著者
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