抄録
夏型の飼料作物の化学成分と栄養価について,主に細胞壁物質(CW)に主眼を置いた調査を行なった。供試したのはグレインソルガム(サイレージ),トウモロコシ(サイレージ),スィートソルガム,イタリアンライグラスである。イタリアソライグラスは対照試料としての意味を持たせた。サイレージはともに糊熟期に刈取って調製したもので,これらについては緬羊による消化試験が実施された。スィートソルガムは乳熟期,糊熟期,黄熟期および完熟期に刈取り,また,イタリアンライグラスは出穂始め,出穂期および開花期に刈取って,乾燥,粉粋し分析に供試した。TDN含量では,平均値の比較において,トウモロコシイレージがグシンソルガムサレージよりも,また,DCP含量ではグレインソルガムサイレージがトウモロコシサイレージよりも高い値を示した。リグニン,ケイ酸の含量においては,グレインソルガムサイレージがトウモロコシサイレージに比してはるかに高い値を示した。CWの消化率に対して強い影響を及ぼすとされているADF中のリグニン含量について,グレインソルガムサイレージとスィートソルガムを比較すると,同じ糊熟期では,ほぼ似た値を示した。トウモロコシサイレージでは,これらよりもかなり低い値しか示さず,また,イタリアンライグラスでは,この値は生育に伴って上昇したが,生育のかなり進んだ開花期においても,ソルガムグループよりは,はるかに低い値しか示さなかった。ルーメンジュースによるin vitroのCW消化試験においては,グレインソルガムサイレージはトウモロコシサイレージおよびイタリアンライグラスよりもはるかに低い値を示した。また,グレインソルガムサイレージにおいては,CW消化率の品種間差が顕著であり,これは緬羊によるCWの有機物分画の消化率の値と同じ傾向を示し,品種によるCWの構造の異質性が示唆された。