日本草地学会誌
Online ISSN : 2188-6555
Print ISSN : 0447-5933
ISSN-L : 0447-5933
放牧野草地のネザサにたいする施肥および休牧の効果
名田 陽一鎌田 悦男今堂 国雄沢村 浩
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

1983 年 29 巻 2 号 p. 141-147

詳細
抄録

過放牧により衰退したネザサ草地に施肥および休牧を行ない生産力の回復をはかった。施肥は窒素0,10,20,30kg/10aを1度施し,その後3年間の影響を見た。休牧は施肥と同時に開始し1,2,3年間の各休牧区を放牧区と比較した。回復の目安として初秋における現存量と初夏および初秋における草丈,1葉の大きさ,1茎の葉数,単位面積当りの茎数を3年間調査した。さらに年1度の秋の採草のみが行なわれ生産力が安定している草地のネザサの形質を調査して試験地のネザサの形質と比較した。採草地のネザサに比べて放牧地のネザサの草丈および1葉の大きさは1/3で,葉数は2葉少なく,茎数は2倍であった。施肥,休牧により草丈は採草地のネザサと等しくなり,葉数および1葉の大きさは3/4と近づいたが茎数は依然2倍を保ち,本試験期間の3年間を経てもなお生産構造は変化途上であると推定される。休牧により増大した草丈,1葉の大きさ,葉数は開牧により再び減少した。これらの形質は開牧後の年数が進むにつれて放牧区に近づくが,開牧2年後においても放牧区よりも大きく,なお休牧の影響を残した。施肥区の平均現存量(乾物重)は1年後に無施肥区に比較して倍増した。また施肥量の違いについては施肥後1年目の現存量は,その差は少ないが施肥量に応じた増加を示した。一方同時期の草丈は施肥量の多い順に低く,濃度障害の可能性もある。しかし窒素10kg区の乾物重,草丈が1年目以降は等しかったのに対して20,30kg区では2,3年後も増大しており,多肥が無駄であるとは断定出来ない。

著者関連情報
© 1983 著者
前の記事 次の記事
feedback
Top