日本草地学会誌
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暖地型飼料作物の水ストレス耐性機構の解析 : VI.異なる土壌水分条件下における根の発達と養分・水分吸収能の草種間差異
尾形 昭逸実岡 寛文松本 勝士
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1985 年 31 巻 3 号 p. 263-271

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抄録
暖地型飼料作物の水ストレス耐性には草種間差異が存在し,水ストレス耐性草種は水ストレス下でも高い養分・水分吸収能を維持する。本研究では,水ストレス耐性草種がどのような要因で高い養分・水分吸収能を維持しうるかを明らかにすることを目的とし,水ストレスが根の分布および植物体の浸透ポテンシャル,さらに根圧に及ぼす影響を調べた。土耕により栽培したローズグラス(Chloris gayana Kunth.),ソルガム(Sorghum bicolor Moench.),ハトムギ(Coix lacryma-jobi L. var. mayuen (Roman.) Stapf.)に35日間水ストレス処理(pF 2.8〜3.2)を行ない,植物体各部位の浸透ポテンシャル,根部乾物重,根長,根径,属位別根系分布および根圧等を測定した。その結果,(1)水ストレスによる浸透ポテンシャルの低下程度は,ハトムギに比較しローズグラスで大であった。(2)低水分区でのローズグラスの総根長および根表面積は,ハトムギに比較しそれぞれ5〜6,3〜4倍に達した。(3)低水分区での根系は,ローズグラスでより深い土層まで分布するのに対し,ハトムギでは表層のみに分布する傾向にあった。(4)根圧は水ストレスによりローズグラスで増加し,ハトムギで低下する傾向にあった。以上の結果,水ストレス耐性草種,ローズグラスの養分ならびに水分吸収能が,水ストレス下でも高く維持しうる要因として,(1)水ストレス下で茎基部,葉部の浸透ポテンシャルを低下させることにより地上部の吸水能を高めることと,(2)根系が地下深層まで発達し,また総根長を増大させることにより根の吸水面積を拡大させ,かつ根圧を高めることにより水ストレス下でも養分および低い土壌水分を効率的に吸収し,地上部に押し上げる力が高いことの2つが考えられた。
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© 1985 著者
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