抄録
暖地型牧草の最終刈取後の刈株がイタリアンライグラス・品種ミナミワセの発芽・生長に及ぼす影響を明らかにするための試験を,実験室および圃場条件下で行なった。実験室では,暖地型牧草,8草種・11品種の刈株の水溶性抽出物を含ませた炉紙上でイタリアンライグラス種子を発芽させ,置床10日後に発芽率,発芽個体の幼芽長および種子根長を測定した。圃場では,上記の暖地型牧草の単作あと地を耕起してイタリアンライグラスを播種し,定着個体数および収量を調査した。得られた結果の概要は以下のとおりである。1.イタリアンライグラスの発芽率は抽出物濃度(刈株乾燥材料1〜4g/水溶液100ml)が高くなるほど低下する傾向がみられた。草種・品種別にみると,高濃度条件(4g/100ml)では,シコクビエ,ギニアグラス・GR-171,セタリア・カズングラおよびナンディの発芽阻害作用が大きかったが,低,中濃度条件(1,2g/100ml)では,いずれも発芽が良好で,抽出材料(草種・品種)の違いによる差は明らかでなかった。2.発芽個体の幼芽長は抽出物濃度が高くなるほど増加し,種子根長は逆に減少した。草種・品種別にみると,シコクビエ,ギニアグラス・GR-171,ローズグラスおよびカブラブラグラスの抽出物による種子根の発育阻害が著しかったが,抽出材料の違いが幼芽長に及ぼす影響については明らかな差異が認められなかった。3.各草種・品種の栽培あと地に播種したイタリアンライグラスの定着個体数と乾物収量は,高濃度抽出物中での発芽率および種子根長とほぼ類似した傾向を示し,シコクビエあと地が最も少なく,ギニアグラス・GR-171とセタリア2品種のあとも概して低い値を示した。上述の発芽率と1番刈および1,2番刈合計の乾物収量との間には有意な正の相関が認められた。