日本草地学会誌
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バヒアグラス放牧草地におけるエネルギーと物質の流れ : II.一次純生産と太陽エネルギー利用効率
平田 昌彦杉本 安寛上野 昌彦
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1986 年 31 巻 4 号 p. 387-396

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抄録
バヒアグラス放牧草地において,ホルスタイン育成牛を用いた輸換放牧を行ない,一年間にわたって,一次純生産と太陽エネルギー利用効率について調査した。また草地の熱量やリター消失速度についても調査を行なった。1.草地の部位別熱量は,穂・葉・ほふく茎で4.25〜4.69Kcal/g(17.8〜19.7KJ/g),茎・立枯で3.95〜4.23Kcal/g(16.6〜17.7KJ/g),根・リターで3.43〜3.91Kcal/g(14.4〜16.4KJ/g)で推移した。2.草地の植物体現存量の熱量は5278〜7855Kca1/m^2(22.1〜32.9MJ/m^2),リターを含めた全有機物の熱量は,6539〜9998Kcal/m^2(27.4〜41.9MJ/m^2)であり,現存量中に占める器官別の熱量分布割合は,穂で0〜1%,葉で1〜17%,茎で7〜19%,立枯で4〜14%,ほふく茎で24〜40%,根で32〜48%となった。3.リター消失速度は0.00044〜0.00632g/g/dayの値を示し,季節間での大きな差異が観察された。4.一次純生産の太陽エネルギー利用効率は,-0.38〜1.33%の間で推移し,夏季に高く冬季に低い傾向を示した。5.一年間にわたる本実験期間中,バヒアグラス放牧草地には1214879Kca1/m^2(5090.3MJ/m^2)の全短波放射が投射され,そのうち6916Kcal/m^2(29.0MJ/m^2),効率にして0.57%のエネルギーが植物により一次純生産として固定された。さらに,この一次純生産のうち,41.4%のエネルギー(2863Kca1/m^2,12.0MJ/m^2)が家畜による採食草に,24.0%(1657Kca1/m^2,6.9MJ/m^2)が刈取草に,30.6%(2116Kcal/m^2,8.9MJ/m^2)がリター生産に移行した。その結果,年間を通じた植物体内の蓄積エネルギーは,わずか4.0%(280Kcal/m^2,1.2MJ/m^2)で,一次純生産として植物に固定されたエネルギーのほとんど全てが,植物体外に移行していた。
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© 1986 著者
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