日本草地学会誌
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飼料用麦類における非構造性炭水化物の蓄積と耐雪性 : II.非構造性炭水化物蓄積の草種・品種間差とその耐雪性との関係
田村 良文
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1986 年 32 巻 1 号 p. 7-12

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抄録

飼料用麦類の耐雪性を非構造性炭水化物の蓄積と消費の面から検討するため,本報ではエンバク,オオムギ,ライムギの各7品種を供試し,積雪前におけるNSC蓄積の草種・品種間差とその耐雪性との関係を検討した。積雪前NSC含有率は,草種間ではエンバク<オオムギ<ライムギであり,平均値について見ると地上部ではそれぞれ2.6%,5.6%,7.8%,根ではそれぞれ0.9%,3.4%,8.3%であった。供試草種間でNSC蓄積力が大きく異なると考えられる。品種間では各草種において中・晩生品種>早生品種であった。特にライムギでは最高と最低の値を示した品種間に2〜3倍の差があり,NSC蓄積力の品種間差が大きかった。一方,エンバクではその差が1%以下であり,NSC蓄積力の品種間差が小さかった。オオムギは両者の中間的な傾向を示した。なお,以上の傾向は地上部に比較して根でより明瞭であった。積雪前NSC含有率の高い草種,品種ほど雪腐病による被害が少ない傾向が見られた。積雪前に蓄積されたNSCは積雪下で基礎代謝エネルギー源として利用されて生理的衰弱の進行を抑制していると考えられる。融雪直後のNSC含有率の草種・品種間差は積雪前と同傾向であった。積雪前のNSC含有率が高いほど融雪後の再生長に有利であると考えられる。

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© 1986 著者
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