日本草地学会誌
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オーチャードグラス冠部における凍結害の発生経過の形態観察
新発田 修治嶋田 徹
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1986 年 32 巻 3 号 p. 197-204

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抄録
オーチャードグラス冠部の凍結害の発生経過を,解凍直後に作成したパラフィン切片と再生状態の観察によって明らかにした。品種キタミドリの幼苗を用いて,-3℃,-6℃,-9℃,-11℃および-14℃の各温度で16時間凍結した場合(一時的凍結)と,-3℃と-6℃で12週間凍結した場合(連続凍結)のそれぞれについて観察した。一時的凍結では,-6℃から展開する新葉が減少しはじめ,-9℃からは生存個体率も減少した。凍結温度が低いほど生存個体数が減少し,再生量も劣った。主茎は常に分げつに比べて再生しにくかった。凍結温度が低いほど内部の器官・組織(以下部位と呼ぶ)は凍結害を受け,部位別では,幼葉>移行帯>茎頂>葉鞘下部>腋芽>根原基の順に凍結害を受けやすかった。主茎の各部位は分げつのそれらよりも凍結害を受けやすかった。-3℃の連続凍結では,凍結開始後4週目から主茎からの新葉が減少しはじめ,6週目からは生存個体数も減少した。凍結期間が長いほど各部位は凍結害を受けた。部位別では,幼葉≧茎頂>腋芽>葉鞘下部>移行帯≧根原基の順に凍結害を受けやすかった。主茎は分げつよりも凍結害を受けやすかった。-6℃の連続凍結では4週目でほとんどの個体が枯死した。別に,耐凍性の異なる10品種を一時的に凍結したところ,いずれも分げつより主茎が,腋芽より茎頂が凍結害を受けた。融雪期に圃場から個体を採取し,個体を構成する大分げつとそれから発生した一次分げつ,各々について茎頂付近を観察したところ,大分げつの方が幼葉や茎頂の褐変被害が著しかった。以上の結果より,北海道東部地域の冬期間の温度条件のもとでは,個体全体を枯死させるほどではないが,多くの優勢な分げつの幼葉や茎頂を凍結死させ,1番草における出穂茎を減少させるような部分的な凍結害が毎年発生していることが推察された。
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© 1986 著者
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