日本理科教育学会研究紀要
Online ISSN : 2433-0140
Print ISSN : 0389-9039
水溶液概念の理解に関する基礎的研究―水溶液を二分したときの濃さを中心にして―
堀 哲夫松森 靖夫兵田 清彦
著者情報
ジャーナル フリー

1998 年 38 巻 3 号 p. 189-204

詳細
抄録

水溶液を分けるという場面を用いると,子どもが「溶ける」という現象を本当に理解しているのかどうかや,「溶ける」ということ以外の「飽和」や「保存」などについてどのように考えているのか調べることができる。そこで,本研究では,水溶液を二つに分けるという場面を用いて,「濃さ」に対する子どもの考えを中心に水溶液に関する学習前の子どもの認識状態を調査した。その結果,水溶液の濃さに対する子どもの考えは,次の五類型になることが明らかになった。このうち,A以外は,科学的に誤った考え方である。A. 水溶液が溶質と溶媒から構成されていることを捉えながら濃さを考えている。B. 溶媒と水溶液の考えを混同しながら,溶質だけに着目して濃さを考えている。C. 水溶液中の溶質について考えることはできているが,溶媒だけに着目して濃さを考えている。D. 溶質と溶媒の両方について考えることができておらず,水溶液の量に着目して濃さを考えている。E. 水溶液の色や濁りで濃さを考えている。また,これらの結果を踏まえて,適切な水溶液概念を形成するために,授業設計や展開における留意点などについて提案した。

著者関連情報
© 1998 一般社団法人日本理科教育学会
次の記事
feedback
Top