抄録
南西諸島で生産される暖地型牧草から高栄養・高品質サイレージを調製するための基礎研究として,石垣島で栽培されたローズグラスとマメ科のスタイロ及びサイラトロを材料に用い,それぞれイネ科草とマメ科草の混合割合を変えた材料によるサイレージ調製試験を実施した。出穂初期のローズグラス並びに前回刈取後10週目のスタイロ及びサイラトロを,それぞれ収穫後ただちに約1cmに細切し,ローズグラスに対しスタイロ(S)またはサイラトロ(M)を生草重量で,100:0(0区),75:25(25区),50:50(50区),25:75(75区),0:100(100区)の割合に混合して実験用サイロに埋蔵した。でき上がりサイレージについて発酵的品質,有機酸組成,加熱乾燥試料による乾物人工消化率(IVDMD)などを調査した。サイレージのFLIEG法による評点は,スタイロ混合サイレージで,S0区52,S25区41,S50区41,S75区31,S100区24(点)であり,サイラトロ混合サイレージで,M0区52,M25区24,M50区15,M75区1,M100区5(点)であった。すなわち,両サイレージともマメ科の混合割合の増加に伴なって,発酵的品質は劣化する傾向にあり,混合割合と評点との間にスタイロサイレージでr=-0.97(P<0.01),サイラトロサイレージでr=-0.91(P<0.05)の有意な負の相関が認められた。そして,マメ科の混合割合の増加とともにサイレージの乳酸含量は減少し,VFA含量は増加する傾向を示した。サイレージのIVDMDは,マメ科割合の高い劣質サイレージで低下する傾向にあった。本試験の結果から,これら暖地型マメ科牧草の混合によって発酵的品質の低下する原因は緩衝能が高いことによることが示唆された。