抄録
ガスクロマトグラフ(GC)でサイレージ中の乳酸と揮発性脂肪酸(VFA)を同時定量する場合,抽出液中の有機酸をあらかじめ遊離処理させる必要があることを明らかにした。測定用カラムにはThermon-3000(Shimalite,TPA担体)を用いた。有機酸が塩の形態で存在するとこのカラムでは検出されなかった。塩を0.1%の硫酸酸性液にするとVFAは遊離し検出されたが十分でなく検量線は湾曲した。また乳酸は全く検出されなかった。その後,硫酸を含まない試料を注入しても乳酸のピークはあらわれず,硫酸添加による有機酸の遊離処理はこのカラムに不適当と思われた。一方,有機酸塩を陽イオン交換樹脂(1R-120)でバッチ法を用い遊離させると有機酸は完全に検出されたので,この方法でサイレージを分析した。サイレージ23点の有機酸量を陽イオン交換しないで測定すると陽イオン交換した場合に比べて乳酸では0-95.8%(平均71.3%),酢酸では81.8-108.1%(平均97.8%)であった。他のVFAには処理間に大きな差は認められなかった。抽出液中には乳酸やVFA以外の陰イオンも含まれており,この多くは無機イオンと考えられた。サイレージのpHが高くなると,あるいは総酸中の有機酸比率が多くなると乳酸の検出率が低下した。乳酸とVFAとの同時定量にはサイレージ抽出液中の有機酸を遊離化することが不可欠であり,陽イオン交換法が望ましいと結論した。