日本草地学会誌
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表面播種におけるイネ科牧草の発芽・定着 : 3.土壌の種類,水分並びに硬度がトールフェスク(Festuca arundinacea Schreb.)の発芽動態とその根鞘毛の固着力に及ぼす影響
森田 脩三石 昭三後藤 正和近藤 敦裕
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1989 年 35 巻 1 号 p. 9-16

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抄録
寒地型牧草のトールフェスク(Festuca arundinacea Schreb.品種:ケンタッキー31)を土壌水分を変えた水田黄色土壌,火山灰性黒ボク土壌2種類,および非火山灰性黒ボク土壌の4種類の土壌表面に播種し,25℃の定温器内で発芽させた。土壌水分は5ないし10%刻みに水田土壌は容水量の40-90%までの間を7段階に,黒ボク土壌は55-90%の問を6段階に調節した。そして発芽型別発芽率,立ち上がり率の一番高い水分区における立ち上がり種子の固着力と,根鞘毛がつかんだ土塊の大きさ,各区の土壌硬度などを測定した。そして,土壌の違いによる土壌水分や土壌硬度の違いが表面播種された牧草種子の立ち上がり率や,立ち上がった種子の固着力の強さにおよぼす影響などについて検討した。1) 各土壌とも土壌水分が増すと軟らかくなって,横臥型(I型)が増え,逆に水分が少なくなり硬くなると根上がり型(III型)が増えた。立ち上がり型(II型)は水田土壌では土壌水分40%区が,黒ボク土壌では85%区が最も多く,立ち上がり率はそれぞれ約80%および40%であった。2) 立ち上がり率が最も高い土壌水分区における根鞘毛の固着力は黒ボク土壌では0.8-0.4gで,水田土壌の3gに比べ小さかった。3) 黒ボク土壌では土壌硬度が5g以上になると根上がり型が急増するが,水田土壌では10g以上の硬さでも立ち上がり型が多かった。4) 各土壌とも土壌硬度が3g以下になると横臥型となった。5) 発芽型別発芽率,根鞘毛の固着力は土壌の違い,特に水田土壌と黒ボク土壌の間における差が大きかった。
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© 1989 著者
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