日本草地学会誌
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バヒアグラス(Paspalum notatum FLUGGE)放牧草地におけるエネルギーと物質の流れにおよぼす家畜の排糞の影響 : VI.生産者レベルでのエネルギーの流れと窒素の流れの関係
平田 昌彦
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1994 年 39 巻 4 号 p. 470-478

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抄録

本研究では,乳用育成牛が放牧されるバヒアグラス草地内の非排糞地点,排糞地点およびその周辺部におけるエネルギーと窒素の流れのデータ(前報に掲載)を用い,エネルギーの流れと窒素の流れの関係について,全データをこみにした場合ならびに排泄糞の影響に注目した場合という2つの視点より解析した。対象としたエネルギーの流れは,1次純生産(P_E),採食(G_E),リター生産(L_E),植物体蓄積(S_E)であり,対象とした窒素の流れは,植物体吸収(U_N),採食(G_N),リター生産(L_ N),植物体蓄積(S_N)であった。全てのデータをこみにした場合,P_EとU_N,G_EとG_N,L_EとL_N,S_EとS_Nの間には有意な正の直線関係が成立した(図1)。これらの全体的な関係は,それらが回帰式で表された時,対象とするシステム内のエネルギーや窒素の流れを予測したり,システムの特徴を把握したりするために有用な情報を与えてくれるものと考えられた。P_EとU_Nの関係は,排糞後の時間,糞塊からの距離,排糞の時期によって程度は変化するものの,糞の影響を受け,P_Eに対してU_Nが促進された(図2)。一方G_EとG_Nの関係は糞の影響をほとんど受けなかった(図3)。このことは,排泄糞によって促進されたU_Nが,採食草の窒素含有量増加にはほとんど寄与しないことを示すものであった。排糞に伴う窒素吸収の動態については,全植物体レベルで土壌の化学的状態との関連から,調査・検討することの必要性が示された。

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© 1994 著者
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