日本草地学会誌
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トールフェスク(Festuca arundinacea Schreb.)の8年目放牧草地個体群のクローン構造
澤田 均伊藤 仁美
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1994 年 39 巻 4 号 p. 479-487

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抄録

トールフェスクは叢状のイネ科牧草であるが,しばしば根茎による栄養繁殖が知られている。本研究では,根茎によってどの程度クローンが拡がっているかを知るために,でんぷんゲルとポリアクリルアミドゲル電気泳動法により,8年目放牧草地のクローン構造を分析した。まず多型的な5酵素(ACP,EST,GOT,6PGD,PGI)の泳動条件を決定し,品種ホクリョウの品種内変異を分析した。その結果,分析した150個体中113個体(75.3%)がユニークな表現型を示し,株の位置関係を考え合わせることにより,比較的高い精度でクローンを識別できるものと考えられた。そこで8年目放牧草地においてトールフェスクのクローン構造を分析した。2個の方形区(各1×1m)を設置してその中の全株を収集し,クローン識別した結果,合計50個のクローンが検出された。このうち14個は複数のラメート(株)を分散させているものと推定された。以上の結果から,このトールフェスク集団は部分的に根茎によって維持されていることが指摘された。このクローン識別法は,草地内でより消失しにくいトールフェスク遺伝子型を探索する上で有効と考えられた。

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© 1994 著者
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