日本草地学会誌
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オーチャードグラス(Dactylis glomerata)品種における競争力の品種間変異とその関連形質
杉山 修一中嶋 博
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1994 年 40 巻 2 号 p. 179-189

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抄録

混播草地の草種構成は,草地生産力や牧養力を決める大きな要因である。草地の草種構成には草種間の競争力の相対的差が大きく関与しているとされている。本試験では,牧草種の種内にどれくらいの競争力の変異が存在し,それらの変異がどのような植物的特性によって決っているかを調べる目的で,オーチャードグラス18品種間の競争力の変異を比較した。競争力は,オーチャードグラス各品種を実験圃場に単播草地とトールフェスク(Festuca arundinacea)の競争力の強い品種(Kentucky31)と弱い品種(Hokuryo)との混播草地を作ることによって検定した。実験は2年間行われ,1年目に1回,2年目に4回の刈取りを行った。各刈取り時に各構成種の地上部乾物重を測定した。競争力の指標は年間の面積当りの合計収量を基に,aggressivity(オーチャードグラスの相対収量-トールフェスクの相対収量)を用いた。また,ポット条件下での各品種の地上部と地下部の乾物重と形態形質を測定した。得られた結果は以下の通りである。(1) オーチャードグラス,トールフェスクともに,用いた品種間には競争力に大きな差異が認められた。また品種間差異は1年目より2年目で大きくなる傾向にあった。(2) オーチャードグラス品種間の競争力は,1年目には実生の出芽の早さとのみ有意な相関を示した。2年目では競争力は個体の乾物重,特に根の大きさや平均分けつ重,平均根垂との間に正の有意な相関を示した。(3) 用いたトールフェスク2品種のうち,競争力の高い品種は弱い品種に比べて,種子サイズが大きく出芽も早く,根重も平均根重も大きかった。しかし,オーチャードグラスと異なり,競争力の高い品種は,分けつサイズが小さかった。これらのことから,品種間の競争力の差は,定着年には定着時の種子の大きさや発芽の早さなど実生の定着に関係する形質が,またそれ以降では,根の大きさや根の地中での分布様式が競争力と強く関係することが示唆された。

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© 1994 著者
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