1994 年 40 巻 2 号 p. 190-197
草地における牧草のバイオマスは,牧草がパッチ状に生育していて,そのパッチの大きさが時空的に複雑に変動している特徴をもつ。地形,家畜の種類,牧柵の位置,鉱塩を置く位置,給水場などの諸因子が,家畜に不均一な採食をもたらす。現在,草本植物のバイオマスの推定に用いられている方法には正規分布を仮定している。この仮定は,牧草バイオマスの確率密度関数は採食等によって変化が生じるために当てにならない。本研究では,放牧強度と時間の関数としたAgropyron cristatumのバイオマスの分布のモデリングのために,パラメータを3つもったワイブル分布の評価と正規分布との比較を行った。重みつきモメント法(PWM)で推定したワイブル分布のパラメータは,コロモゴロフの検定を行った結果,12ケース全部が実測したバイオマスの分布に5%の統計的有意水準で適合した。一方,正規分布では,実測したバイオマスの分布の75%が適合したにすぎなかった。