抄録
北東北地域におけるフェストロリウム品種エバーグリーンの飼料栄養特性を明らかにする目的で,採草用品種として国内で最も一般的な品種であるエバーグリーンを用いて,収量性,生育時期別の飼料成分およびTDN含量の変化について調査した。試験は1997年から2000年まで行い,比較対照として北東北地域の主幹草種であるオーチャードグラス(品種キタミドリ)(Dactylis glomerata L., cv. Kitamidori)を用いた。造成後4年間,エバーグリーンはキタミドリと同等な収量性を示した。エバーグリーンは可溶性炭水化物(WSC)含量が高く,出穂期後15日目になっても13%DM以上の高値を維持していた。一方,キタミドリのWSC含量は生育にともなって急激に低下し,刈り遅れた場合のサイレージ材料としての特性はエバーグリーンの方が優れていると考えられた。また,生育時期の進行にともなう可消化養分総量(TDN含量)の低下もエバーグリーンの方が緩やかであり,刈り遅れによる品質・栄養価の低下はキタミドリより少ないと考えられた。以上のことから,エバーグリーンは少なくとも5年程度の永続性を有し,天候や作業日程により収穫調製が遅れても比較的利用しやすい品種であると結論された。