2018 年 64 巻 2 号 p. 81-90
前年に播種して造成したヘアリーベッチの立毛中にダイズを不耕起播種した後にヘアリーベッチの再生抑制のためにディスクハロを掛ける「リビングマルチ栽培体系」について,その雑草防除効果を検討するとともに,この体系を最適化するためのディスクハロ掛けの時期とダイズの栽植様式を検討した。ダイズ播種後に形成されたヘアリーベッチの枯草マルチにより,雑草は除草剤を用いることなく抑制されたが,抑制の程度は供試した圃場により異なり,オオイヌタデ優占圃場で最も大きく,イヌビエ優占圃場で最も低かった。ディスクハロ掛けは,ヘアリーベッチの過剰な再生を抑制する手段として有効であり,この工程を付加することにより,ヘアリーベッチの巻き付きに起因するダイズの倒伏が大幅に改善された。ディスクハロ掛けは,ダイズ播種後4日以内に行えば,ダイズの発芽や収量性に悪影響を及ぼすことはなかった。一方,ダイズの栽植密度が低いと,リビングマルチ栽培下での雑草が増加し収量が低下する傾向がみられ,12000本/10a以下の密度は,本体系における栽植密度として適切でないことが示された。リビングマルチ栽培下での畦幅(75cmと37.5cm)の違いは,雑草防除効果や収量性に明確な影響を及ぼさなかった。