地理学評論 Series A
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論説
タイ・アマタナコン工業団地における自動車部品企業の集積プロセスとリンケージの空間的特性
宇根 義己
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2009 年 82 巻 6 号 p. 548-570

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抄録

タイで最も多くの日系自動車部品企業が立地するアマタナコン工業団地を取り上げ,企業集積のプロセスとリンケージの特性を明らかにした.まず,当団地の立地戦略において,バンコク都心部から通勤可能である上,政府機関の地域別税制恩典制度においてバンコク大都市圏よりも厚い恩典が享受できる点が企業に評価された.当団地には量産型車種を生産する自動車工場が立地していない.だが,1990年代以降の自動車工業地域の拡大に伴い,当団地がその中央部に位置するようになり,物流コストの低減を重視する部品企業の立地が促進した.さらにアジア通貨危機後は,団地内のエンジン工場の生産拡大に対応してエンジン部品企業が立地した.また,日本人・商社の関与による大規模開発が当団地に安心感と知名度をもたらし,農村地域からの労働力と日系企業を引きつけた.以上のプロセスにより当団地に企業集積が形成された.国内のリンケージは,複数の自動車企業や垂直的・水平的関係にある企業との間に形成されている.リンケージを空間的にみると,日系企業が集中する特定の工業団地間を中心としており,団地内リンケージは限定的である.

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© 2009 社団法人日本地理学会
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