地理学評論 Series A
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短報
熊本県水俣市の限界集落における耕作放棄地の拡大とその要因
寺床 幸雄
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2009 年 82 巻 6 号 p. 588-603

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抄録

本研究では,中山間地域の限界集落における耕作放棄地の拡大とその要因について,各農家の農業経営における意思決定に注目し,背景となる社会変化を踏まえて明らかにした.さらに,中山間地域等直接支払制度の有効性についても検討した.農業経営と土地利用の変化に注目すると,対象地域の農業は二つの時期に区分できた.第1期の1980年代までは,生産調整や機械化にともない,耕地跡への植林が進行した.第2期の1990年代以降においては,主たる農業従事者の引退が発生し,それにともなって耕作放棄地が急速に拡大した.耕地の貸借が行われるようになったものの,耕作放棄を十分に抑制するまでには至っていない.中山間地域等直接支払制度は,農業の持続にある程度の役割を果たしていたが,指定基準の問題など,改善すべき課題も明らかとなった.

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© 2009 社団法人日本地理学会
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