抄録
本研究では,人口減少や年齢構成の変化に伴って生じる問題の一例として,公立小中学校の廃校をとりあげた.特にその跡地利用を論題に据え,都市圏内における地域差と,その背景となる地理的条件の差異を分析した.分析にあたっては,東京大都市圏を研究地域に設定し,全廃校跡地を対象とするアンケート調査と,都心部・都心周辺部・郊外部から1自治体ずつを選んでの事例調査を行った.自治体は,一般に公益を満足しない用途での廃校の跡地利用を避ける一方,公益目的であれば,民間事業者などに跡地を譲渡・売却してその維持コストの削減を図ることも多い.このことが,高地価のため民間事業者による公益的な施設の運営が難しい都心部や,大規模な未利用地の希少性に乏しい郊外部に比べ,都心周辺部で跡地の売却・譲渡や恒久利用が先行するという地域的傾向を生んでいると考えられる.