地理学評論 Series A
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論説
日本企業によるグローバルなネットワーク形成と知識結合
與倉 豊
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2010 年 83 巻 6 号 p. 600-617

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抄録

本稿は,グローバル企業の知識結合に着目し,日本企業による外資導入の実績に関する資料を基に,社会ネットワーク分析を用いて組織間の関係構造を考察した.さらに共分散構造分析を用いて,知識結合に基づく企業間ネットワークの特性と,企業のパフォーマンス(経済的成果)との関連性について検討した.分析の結果,製造業18業種がコンポーネント数や平均次数といったネットワーク統計量の差異によって六つのグループに類型化された.ノード数が多く複雑なネットワークを,ブロックモデルを用いて縮約化することによって,知識結合において重要な役割を果たすグローバル・ハブが抽出された.また,多母集団同時分析によって,ネットワークの関係構造において優位な位置にあるノードほど,財務諸表で測られる企業のパフォーマンスに対して正の影響を与えることが示された.さらに,医薬品や電気機器,自動車等,精密機械など科学的・分析的知識を必要とする業種ほど,ネットワーク優位性の影響が強く働くことが明らかになった.

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© 2010 社団法人日本地理学会
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