地理学評論 Series A
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論説
中山間農業地域における広域的地域営農の存立形態
——長野県飯島町を事例に——
市川 康夫
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2011 年 84 巻 4 号 p. 324-344

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抄録

本稿は,長野県飯島町を事例に農業集落という限られた範囲を超えて設立された広域的地域営農の存立形態を,それを構成する多様な主体の役割やそれら相互の連関の分析から明らかにすることを目的としている.研究対象地域では,農業従事者の高齢化が進み,農外就業機会に恵まれていることから小規模兼業農家が多く存在している.また,中山間農業地域で特徴的な傾斜地水田が卓越していることから,草刈りを中心とした畦畔管理が,飯島町の農業生産性向上を阻害している.この地域では,複数の農業集落から構成される地区を単位に,多様な主体を取り込んだ広域的地域営農が展開している.各主体がそれぞれの役割を担いながら相互に連携していること,さらに小規模兼業農家や高齢者,非農家の労働力を農作業・農地管理作業に積極的に活用することが,広域的地域営農存立の重要な基盤となっている.

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© 2011 社団法人日本地理学会
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