抄録
「平成の大合併」を通勤圏(日常生活圏)や国土集落システムとの関係から考察した結果,「昭和の大合併」では中心地システムへ適合するかたちの合併が多かったが,高度経済成長期を経て大きく変化した国土の中で実施された「平成の大合併」では,国土集落システムへの適合が基本的条件となった.過疎地域が広い面積を占める地方圏では小規模町村の多くが合併したが,市町の規模が大きく財政的にも豊かな大都市圏内の市町村では合併は比較的少ないままにとどまったので,住民生活における地域格差をむしろ拡大することとなった.通勤圏の未発達な山間僻地や離島には未合併町村が多く残されているが,通勤圏や日常生活圏を全く無視した市町村合併は少ない.