本稿の目的は,日本における大学発ベンチャー企業の立地動態を明らかにすることである.筆者は,全国規模でのアンケート調査を独自に実施するとともに,母体機関との関係のあり方,および事業の性質という二つの基準によって大学発ベンチャー企業を4類型に区分した.この類型区分に基づいて,設立時点と調査時点の立地を比較し,立地行動とその要因を分析した.結果として,母体機関との関係が強い企業は,事業の性質にかかわらず母体機関との近接性を重視して地方圏にも立地し続け,事業拡大に際しても支所配置により母体機関への近接性を保ちながら市場へのアクセスを確保していることが明らかになった.一方で,母体機関との関係が弱い企業は,近接性を重視せず,事業の性質によっては大都市を指向して移転を行う傾向が確認された.これらの知見は,大学発ベンチャー企業の立地行動を母体機関との近接性だけで特徴づける既往の研究に異論を呈するものである.
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