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地理学評論 Series A
Vol. 85 (2012) No. 2 p. 85-105

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http://doi.org/10.4157/grj.85.85

論説

湧水湿地の形成や維持に,その周囲における人の営為がどのような影響を与えていたのかを,里地・里山の中に存在する愛知県豊田市の矢並湿地を事例に論考した.事例地において,湿原内の植生分布,湿地周囲の環境変遷,堆積物の層相・層序と年代を調査し,総合的に検討した.その結果,砂防堤築造や水田造成などの人為的インパクトによって,湧水が地表を拡散して流れる地形が形成され,湿地が形成されたことが明らかとなった.また,矢並湿地の湿原植生の分布は地下水位とよく対応していたが,地下水位は周囲の里山の管理状況によって変化しうると考えられた.さらに,湿原内での採草行為や,未熟な植生が引き起こした湿地周囲の斜面崩壊も,湿原植生の遷移を抑制した可能性がある.このように,湧水湿地は,周囲における人の営為の影響を受けて形成され,その特徴的な植生を維持する場合がある.

Copyright © 2012 社団法人日本地理学会

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