地理学評論 Series A
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85 巻, 2 号
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論説
  • ——愛知県矢並湿地の事例——
    富田 啓介
    原稿種別: 論説
    2012 年 85 巻 2 号 p. 85-105
    発行日: 2012/03/01
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル フリー
    湧水湿地の形成や維持に,その周囲における人の営為がどのような影響を与えていたのかを,里地・里山の中に存在する愛知県豊田市の矢並湿地を事例に論考した.事例地において,湿原内の植生分布,湿地周囲の環境変遷,堆積物の層相・層序と年代を調査し,総合的に検討した.その結果,砂防堤築造や水田造成などの人為的インパクトによって,湧水が地表を拡散して流れる地形が形成され,湿地が形成されたことが明らかとなった.また,矢並湿地の湿原植生の分布は地下水位とよく対応していたが,地下水位は周囲の里山の管理状況によって変化しうると考えられた.さらに,湿原内での採草行為や,未熟な植生が引き起こした湿地周囲の斜面崩壊も,湿原植生の遷移を抑制した可能性がある.このように,湧水湿地は,周囲における人の営為の影響を受けて形成され,その特徴的な植生を維持する場合がある.
  • ——認知言語学との接点——
    今里 悟之
    原稿種別: 論説
    2012 年 85 巻 2 号 p. 106-126
    発行日: 2012/03/01
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル フリー
    本研究は,耕地一枚ごとの通称地名である「筆名」について,命名原理と空間単位に関する従来の知見を再検証した.棚田と散村が卓越する,長崎県平戸市宝亀町および木場町の8世帯・計139枚の耕地を事例に,筆名とその由来,筆名が指示する空間単位,土地利用,面積と斜度,周囲の景観要素などについて調査した.その結果,従来の研究で提示された四つの命名原理の出現頻度が平地農村とは異なる点,同一の集落内でも命名原理に大きな世帯差が見られる点,時に複数の命名原理による筆名が存在する点,小字名の転用以外の方法でも情報量が節減されている点,などが明らかになった.さらに,認知言語学におけるアフォーダンス,プロトタイプ,ランドマークとトラジェクター,ベースとプロファイルの諸概念が,命名原理の一部を理論的に説明し得ることが見出された.空間単位に関しては,従来の仮説の部分的な修正が必要である.
短報
  • 福島 あずさ, 高橋 日出男
    原稿種別: 短報
    2012 年 85 巻 2 号 p. 127-137
    発行日: 2012/03/01
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル フリー
    ヒマラヤ南面のネパールにおいて,長期の日降水量データを用い,降水量と降水特性の季節変化およびその地域性を調べた.クラスター分析によって降水量季節変化の地域性に基づく地域分類を行った結果,西部ミッドヒル・テライ,西部山岳,東部ミッドヒル,東部テライの4地域に分類された.平均日降水量の季節変化の特徴として,4~5月のプレモンスーン季の降水量の増加が,東部地域を中心に顕著であった.また,西部山岳地方では年間を通じて日降水量が少ない.各地域における降水特性の季節変化の比較から,西部山岳地方を除き,夏季に月降水量,降水日数,降水強度の増大期が見られ,ピークは7月であった.また西部の全域と東部ミッドヒル地方の一部では,冬季の降水量,降水日数,降水強度が大きい傾向にある.さらに東部テライ地方は,9月を除く4~11月の降雨強度が他地域と比べて最も大きく,11~3月は最も小さいことから,降水量の季節変化が最も大きい地域といえる.
  • ——東海道線沿線の事例——
    鎌倉 夏来
    原稿種別: 短報
    2012 年 85 巻 2 号 p. 138-156
    発行日: 2012/03/01
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,首都圏近郊の東海道線沿線における大規模工場用地の利用変化と存続工場における研究開発機能の新展開を分析することである.首都圏に古くから立地してきた大規模工場は,特に都心に近接している場合,その多くがすでに閉鎖し,オフィスビルやマンション,商業施設に変化していた.しかしながら,マザー工場として生産機能を維持することで,あるいはまた研究開発機能を強化することで,存続している拠点も存在している.特に2000年代以降の研究開発機能の変化としては,1)製造機能と研究開発機能との近接性を重視した研究開発機能の強化,2)顧客志向の研究開発拠点の増設,3)シナジー効果の創出を目的とした集約型研究開発拠点の新設といった点があげられる.
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