地理学評論 Series A
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総説
ヨーロッパにおけるボトムアップ型・内発型農村開発をめぐる研究と議論
——LEADER事業を中心に——
梶田 真
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2012 年 85 巻 6 号 p. 587-607

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抄録
本稿では,1990年代以降,ボトムアップ型・内発型の農村開発の推進を図ってきたEU・LEADER事業に関する学術研究の展望を行った.これらの研究は,農村開発をめぐるアクター間の権力関係の問題や,効果的なパートナーシップ構築における専門的な支援者の重要性,事業評価を通じた学習やエンパワーメントの重要性を明らかにしている.また,現場の動きを踏まえた理論化を通じて,内発型・外来型の二分論を超えた新内発型農村開発論の提起も行われている.こうした成果は,地域的・制度的な文脈の違いはあるものの,現代の日本の農村においてボトムアップ型・内発型農村開発を進める上での重要な論点を示している.また,現場の動きと社会理論の双方を踏まえて,より精緻な農村開発理論を提示しようとする試みは,農村開発に関わる研究者の研究戦略を考える上でも多くの示唆を与えるものである.
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© 2012 社団法人日本地理学会
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