地理学評論 Series A
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短報
ICTを活用した医薬品流通システムの構築過程
——川崎市北部の事例——
中村 努
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2013 年 86 巻 3 号 p. 288-299

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抄録

本稿では,川崎市北部において,医薬分業が大病院で実施されるのに伴い,ICTを活用して医薬品を安定供給できるシステムがどのように整備されたのかを明らかにした.流通システムの整備には,差別化の手段として流通システムへの大規模投資を行った医薬品卸の経営戦略と,薬局へのICTの導入率を高める役割を担った薬剤師会による仲介が不可欠であった.川崎市北部は医療サービスに対する需要が大きい,人口に比して薬局,病院,入院病床などの医療資源が不足している,医療資源の多くを大病院に依存している,といった大都市圏特有の医療環境を有する.こうした環境を踏まえ,医薬品卸は情報システムへの大規模投資を行い,薬剤師会はすべての薬局が医薬品にアクセスできるよう,個々の薬局の利害を代表して,ICTの導入を間接的に支援した.こうした環境に対応した関係主体の行動によって,医薬品の安定供給においてICTの機能が発揮されることが明らかになった.

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© 2013 社団法人日本地理学会
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