本稿では,ユリ切花産地によるブランド化の実態をとらえ,その効果と課題を明らかにし,花きのブランド化の取組みが産地・生産者にもたらす意味を考察した.ユリ切花ブランド「魚沼三山」の展開において,グローバルスケールでは輸入ユリ球根調達に関わる国際的連関が,ナショナルスケールでは高品質ユリ球根の生産委託による国内産地連関と出荷等級品ごとに市場を選択する国内市場連関が,ローカルスケールではユリ切花の生産と出荷における産地内連関がそれぞれ形成されてきた.本事例では,産地が独自に開発した品種ではなくても,地域連関にみられる流通業者を通じた既存品種の調達方法の革新,球根冷蔵管理技術の開発,切花の生産過程の改良,出荷・販売過程の組織化などによって,製品差別化が実現されている.これらの取組みは,他の産地・生産者が模倣困難であるとは必ずしもいえないが,一連に結びつくことで一定の参入障壁となり,高付加価値化を可能にしている.