2014 年 87 巻 5 号 p. 367-385
本稿では,ホスト社会における外国人労働者の生活活動の様態を,滞日ブラジル人84人の生活活動日誌を用いてミクロレベルから分析し,時間地理学的アプローチを用いたエスニシティの解明を試みた.滞日ブラジル人の生活活動時間は男女間において有意な差がみられるが,双方ともホスト社会において,家族という個人的なネットワークの中で比較的閉鎖的な生活を送っている.また,滞日ブラジル人の日常生活では,自宅内での余暇活動やエスニック・ビジネスの利用によるエスニック・ネットワークの保持よりも,大型商業施設など日本人が経営する店舗の利用による消費活動が多く行われる.これら消費活動という側面に限定された同化の進行により,従来「顔の見えない」存在とされてきた滞日ブラジル人は,日常生活における再生産という場面において,ホスト社会住民との接触機会が増大している.