地理学評論 Series A
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87 巻, 5 号
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論説
  • 片岡 博美
    2014 年 87 巻 5 号 p. 367-385
    発行日: 2014/09/01
    公開日: 2019/10/05
    ジャーナル フリー

    本稿では,ホスト社会における外国人労働者の生活活動の様態を,滞日ブラジル人84人の生活活動日誌を用いてミクロレベルから分析し,時間地理学的アプローチを用いたエスニシティの解明を試みた.滞日ブラジル人の生活活動時間は男女間において有意な差がみられるが,双方ともホスト社会において,家族という個人的なネットワークの中で比較的閉鎖的な生活を送っている.また,滞日ブラジル人の日常生活では,自宅内での余暇活動やエスニック・ビジネスの利用によるエスニック・ネットワークの保持よりも,大型商業施設など日本人が経営する店舗の利用による消費活動が多く行われる.これら消費活動という側面に限定された同化の進行により,従来「顔の見えない」存在とされてきた滞日ブラジル人は,日常生活における再生産という場面において,ホスト社会住民との接触機会が増大している.

短報
  • 苅谷 愛彦, 清水 長正, 澤部 孝一郎, 目代 邦康, 佐藤 剛
    2014 年 87 巻 5 号 p. 386-399
    発行日: 2014/09/01
    公開日: 2019/10/05
    ジャーナル フリー

    山地の解体過程において,大規模地すべりの時間的推移を詳しく検討することは重要である.本論文は,このような視点から関東山地南部・三頭山(標高1,531 m)北西面の大規模地すべりをとりあげ,踏査や空中写真判読,年代測定に基づき,その地形・地質的特徴と発生年代を論じたものである.この大規模地すべりは三頭山山頂から西北西方向に伸びる稜線の直下で発生し,滑落崖を形成した.地すべりで斜面物質は約1.5 km移動し,谷壁や谷底に堆積した.地すべり移動体はジグソー・クラックを伴う厚い礫層からなり,堰き止めを起こし湖沼・氾濫原を形成したとみられる.初生地すべりはcal AD 1292~1399(鎌倉時代~室町時代)かそれ以前に発生し,二次地すべりがcal AD 1469~1794(室町時代~江戸時代後期)に生じた.山麓の集落には,湖沼・氾濫原の決壊や二次地すべりを示唆する伝承が残されていることも判明した.

  • 上西 勝也
    2014 年 87 巻 5 号 p. 400-413
    発行日: 2014/09/01
    公開日: 2019/10/05
    ジャーナル フリー

    本稿は明治初期に英国から導入された水準測量について導入過程を述べ,現地で水準点の残存調査を行い,さらに英国の水準点の実態調査により,形状の差異を確認したものである.当時の水準点は日本では内務省により設置され「几号高低標」と呼ばれ,主として構築物の垂直面に「不」の文字の形が刻されたものであった.これらの几号高低標は一部残存しており,東京,東北地方をはじめ154ヵ所で確認することができた.そのうち東京中心部を例にとると43ヵ所が残存しているが,もとは166ヵ所の設置が推定され,残存状況がよくない.一方,几号高低標と同等の英国測量局のカットマークと呼ばれる水準点については約50ヵ所の調査を行ったが,日英の形状を比較すると英国の方が多様である.英国は設置数も多く,構築物の残存状況にも大きな差がある.日本の近代化に貢献した測量に用いられた几号高低標の保存は急がれる課題である.

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