2016 年 89 巻 3 号 p. 118-135
日本における世界遺産登録は,地域資源の価値の評価と保存・保全への担保という性格だけでなく,地域資源と観光とのより強固な結合という性格も有する.2011年6月に日本で4番目の世界自然遺産に登録された小笠原諸島においても,登録が観光に大きな影響を与えた.本稿では,世界遺産登録前後の観光客について,その数の変化と,属性・観光行動などの質的変化を明らかにした.その結果,登録によって,全国的に知名度が上がり,急激な観光客の増加が見られた一方で,受入数の制限から,観光客の入替わりが起こり,リピーターの減少,初訪問者の増加,一人旅の減少などの属性の変化のほか,滞在の短期化やツアーへの参加率の上昇,トレッキングの人気,物見遊山的な行動など,観光行動も変化した.世界遺産登録は,観光地としての小笠原諸島に強力な付加価値を生み出すとともに,そこに引きつけられる観光客を変化させたことが示された.