本研究では,関東地方における対流性降水の発現頻度とその経年変化の地域性を明らかにし,風系との関連を検討した.アメダスの毎時資料(1980~2009年7, 8月)に基づき対流性降水を抽出し,各年における対象領域全体の発現頻度に対する各地点の降水発現率を算出した.対流性降水発現率の経年変化型は,大きく三つに類型化され,I型は北部山岳地域,II型は北部山岳地域の山麓域,III型は南関東の平野域にまとまって分布する.I型とIII型の対流性降水発現率の経年変化には有意な負の相関関係が認められ,I型で対流性降水発現率が高い(低い)年は海風の内陸への進入が明瞭(不明瞭)である.また,III型地域で対流性降水強度の経年変化が明瞭でない一方,その他の要因を含む降水全般の降水強度は増大傾向にある.これらの結果は,降水発現頻度や強度に関する経年変化を,従前活発に議論された南関東より大きな空間スケールからとらえ直すことの必要性を示唆している.
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