地理学評論 Series A
Online ISSN : 2185-1751
Print ISSN : 1883-4388
ISSN-L : 1883-4388
短報
ネパール・テライ低地における住宅の温熱環境
松本 太中村 圭三
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 90 巻 3 号 p. 215-229

詳細
抄録

ネパール南部における住宅の温熱環境の季節的な特徴を明らかにすることを目的として,屋根素材が異なる3住宅で気象観測を行なった.その結果,以下の知見を得た.①非モンスーン季には,日の出以降気温が急激に上昇し,モンスーン季よりも日較差が大きい.晴天日の日中においては,屋根素材のタイプによって屋根面温度の違いが明確に現れた.室温は,日中にはトタン屋根,夜間にはコンクリート屋根の住宅で最も高い.以上の結果から,室温形成に屋根素材の熱的性質が関与していることが検証された.②モンスーン季では,降水や高湿度の影響により,気温の日較差が小さい.日中においては,保水による昇温抑制効果が強いカワラ屋根と保水不可能なトタン屋根との温度差を反映し,室温は,トタン屋根の住宅で最も高く,カワラ屋根の住宅で最も低くなったと考察された.以上のことから,降水が室温に対し強く影響を及ぼしていることが明らかになった.

著者関連情報
© 2017 公益社団法人日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top