2017 年 90 巻 3 号 p. 191-214
英語圏人文地理学における高齢者研究は1980年代後半以降,停滞している.その理由は,高齢者に対する関心を持った地理学者が,その主たる成果の公刊や議論の場を社会老年学,特に環境老年学の分野に移していったことにある.本稿は,人文地理学と社会老年学,特に環境老年学の関係に焦点を当て,その理由を考察した.本稿の知見は,研究環境の違いに加えて,現在の英語圏地理学が抱えている,応用研究を志向する研究者にとっての「居心地の悪さ」にも原因があることを示唆する.