2018 年 91 巻 3 号 p. 249-266
犯罪発生の集積パターンの特定やその要因の説明のため,犯罪研究においてミクロな空間単位が重視されつつある.本稿は従来よりもミクロな空間単位である街区レベルの犯罪発生要因を明らかにすることを目的とし,街区レベルの犯罪機会理論と近隣(町丁字)レベルの社会解体理論について検証した.東京都杉並区における空き巣発生を対象としたマルチレベル分析の結果,街区レベルの対象や監視性の違いが近隣内での犯罪率の差異を説明すること,またこれらとは独立に近隣レベルの社会的環境もまた街区レベルの犯罪発生に寄与していることが明らかになり,日本の都市住宅地において,異なる空間レベルで統合された犯罪機会理論と社会解体理論が有効であることが示された.これらの知見は,異なる犯罪発生プロセスがそれぞれの空間レベルで作用することを示唆するものであり,犯罪現象の統合的な理解や解明に加えて,防犯対策など実践面での応用も期待される.