地理学評論 Series A
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論説
ナミビア北東部ブワブワタ国立公園における住民の生業活動と植生の関係
芝田 篤紀
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2018 年 91 巻 5 号 p. 357-375

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抄録

ナミビア共和国北東部のブワブワタ(Bwabwata)国立公園で暮らす地域住民クエ(Khwe)の人々の生業活動が,公園内の自然環境に与える影響について明らかにした.4カ月の住み込みによる参与観察や聞取りと,植生調査や地形測量などの定量的調査の結果から,国立公園制定にともない設定された二つの区域では,採集・伐採活動の有無による植生構造の差異が推察された.また,伐採と栽植によって有用樹種の分布が偏り,村周辺の植生景観が影響を受けていることが判明した.一方で,伝統的に行われてきた野焼きや,一部の住民によって行われている農業は,周辺環境との有機的な関係が考慮されており,自然環境の維持や管理に関わっていることが示唆された.クエの人々が営む生業活動は,周辺植生に大きな影響を及ぼしその景観を形成しているが,自然環境についての深い知識と認識により,国立公園の自然環境の維持管理の役割を担っている一面もあることが考えられる.

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© 2018 社団法人日本地理学会
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