2020 年 93 巻 4 号 p. 297-313
本稿は,京都市で町家ゲストハウスが急速に増加したことを受け,その町家ゲストハウスの現状および地域に及ぼす影響について明らかにすることを目的とするものである.京都市内でも町家ゲストハウスの増加が顕著にみられる東山区六原を研究対象地域とし,統計データや聞取り調査などを基に,これまでその有効性が多く指摘されてきた町家再利用という現象の社会的インパクトについて,地域的視点からより具体的に検証した.その結果,細街路を有する住宅密集地域内に多く立地するという特徴,またそのために地域社会内では騒音やゴミ等の問題が発生していること,これらの問題に対し地域住民による積極的な働きかけが一定の成果を上げていること,さらに同地区内での地価高騰を誘発している状況が明らかにされた.そして,こうした地域社会への影響に,ツーリズムジェントリフィケーションの一端が見いだされることを指摘した.