2021 年 94 巻 1 号 p. 1-16
日本南極地域観測隊の測地定常観測による有人航空機で撮影されたアーカイブ空中写真に対し,Structure from Motion多視点ステレオ写真測量(Structure from Motion with Multi-View Stereo Photogrammetry: SfM–MVS)処理を行うことで,精密な数値表層モデル(Digital Surface Model: DSM)の作成を試みた.その結果,東南極宗谷海岸のスカルブスネスにおいて,氷食微地形や基盤岩の節理といった微起伏をも判読可能なDSMを作成できた.作成したDSMには,SfM-MVS処理特有の歪みが確認されたが,歪みの3次元曲面トレンドを推定し補正することによって,歪みを軽減することができた.また,今回作成したDSM(画像取得年1993年)と国土地理院作成のDSM(画像取得年2009年)の比較から,露岩上の氷河湖において各DSMの平均二乗誤差を大きく上回る20 m以上の水位変動が起きたことが明らかとなった.本手法で作成したDSMは,地形研究はもちろん氷床質量収支や氷床縁監視などの地球環境変動研究の基礎データとして応用が期待できる.