大都市圏の基礎自治体における地方税の徴収率と財政状況を分析した結果,大都市圏の自治体における財政は景気による変動を受けやすく,地方税の滞納が発生した場合の影響が大きくなることが明らかになった.そこで,計量的な手法を用いて地方税の徴収率と貧困問題に関係する指標を比較し,規定要因と空間パターンを検討した.分析の結果,①地方税の徴収率が低い自治体は平均年収や完全失業率などの貧困問題に関わりのある指標と有意な関係性があり,GWR(地理的加重回帰分析)により60%程度の説明力が認められた.それゆえに,都市内部構造における社会的地位に関する知見に対応した形でセクター状に徴収率の低い地域が現れている.②ローカルMoran統計量の分析を通して,有意に低徴収率が空間的に連続する地域(クール・スポット)が検出された.さらに,GWRの分析により徴収率を規定する要因には地域差があることが示唆される,という2点が明らかになった.