地理学評論 Series A
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論説
木曽三川・庄内川および矢作川流域における堆積土砂量に基づく完新世中期以降の侵食速度
羽佐田 紘大
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2021 年 94 巻 4 号 p. 187-210

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抄録

濃尾平野,矢作川下流低地の堆積土砂量を基に,木曽三川・庄内川および矢作川流域における完新世中期以降の侵食速度を1,000年ごとに求めた.過去6,000年間の侵食速度は,木曽三川・庄内川流域で0.29~0.55mm/yr,矢作川流域で0.15~0.29mm/yrと算出された.流域の平均傾斜から推定した侵食速度は,それぞれ0.45,0.16mm/yr,また,体積計算範囲外側の土砂堆積を考慮した侵食速度は,それぞれ0.37~0.64,0.26~0.48mm/yrとなった.これらの値には桁が異なるほどの違いはないことから,低地の堆積土砂量から流域の長期的な侵食速度の傾向をある程度見出すことが可能であると指摘できる.ただし,矢作川流域の各侵食速度の差については,三河湾の土砂堆積の過大評価や山地に分布する花崗岩類の崩壊のしやすさが影響した可能性がある.体積計算範囲外側における土砂堆積の考慮の有無にかかわらず,両流域の侵食速度は1,000年前以降が最大であった.これは流域での森林伐採などの影響によると考えられる.

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