山地に住む人々は,自給自足的な農業によって生活を維持してきたが,近年山地に住む人々の生活は急速に変化している.本研究ではインド北西部ラダックにある,インダス川支流沿いの標高の異なる3つの村を事例に,農村地域の農業と土地利用の変化を明らかにした.この地域は配給によって住民の食糧が保障されており,多くの住民がラダック域内で出稼ぎ労働を行っていた.都市部へのアクセシビリティの高い村では,主食をつくる農業からより収益性の高い野菜などをつくる農業に変化していた.出稼ぎ労働を行っていても手軽に帰省できるため,多くの人が農業を行うことが予想される.加えて,ラダックでは土地を分割して相続するシステムがあり,今後は比較的小規模な土地所有形態になるのではないかと考えられた.アクセシビリティの低い村では,若い住民は就労や就学のために村を出ていたが,従来の農業が継続されていた.