地理学評論 Series A
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論説
音楽実践によるローカリティの構築―フォルクローレする川俣町―
坂本 優紀
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2022 年 95 巻 2 号 p. 101-122

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抄録

本稿では,福島県川俣町における外来音楽の受容とローカリティの構築過程に着目し,音楽と地域の関係を検討した.その際,音楽を実践の中で創造され改変されていく存在として理解し,演奏や聴取に限定しない多様な音楽的行為を音楽実践として把握した.川俣町では1975年から南米の音楽フォルクローレのイベントが開催されており,現在は日本最大級の規模となっている.当初,イベントに対し一部の住民から反発がみられ,音楽実践は演奏者のみに限られていた.しかし,町内の若年層による実践や行政の関与,外部評価を得たことを契機に音楽が地域へと浸透し,地域活性化の手段として音楽を実践する住民団体が登場した.住民の音楽実践では,音楽を地域資源として認識することが重要であることが示された.また,実践者による積極的な音楽への実体論的/認識論的ローカリティの構築により,音楽と地域が関係づけられることが明らかとなった.

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© 2022 公益社団法人 日本地理学会
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