地理学評論 Series A
Online ISSN : 2185-1751
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95 巻, 2 号
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論説
  • 坂本 優紀
    2022 年 95 巻 2 号 p. 101-122
    発行日: 2022/03/01
    公開日: 2024/03/16
    ジャーナル フリー

    本稿では,福島県川俣町における外来音楽の受容とローカリティの構築過程に着目し,音楽と地域の関係を検討した.その際,音楽を実践の中で創造され改変されていく存在として理解し,演奏や聴取に限定しない多様な音楽的行為を音楽実践として把握した.川俣町では1975年から南米の音楽フォルクローレのイベントが開催されており,現在は日本最大級の規模となっている.当初,イベントに対し一部の住民から反発がみられ,音楽実践は演奏者のみに限られていた.しかし,町内の若年層による実践や行政の関与,外部評価を得たことを契機に音楽が地域へと浸透し,地域活性化の手段として音楽を実践する住民団体が登場した.住民の音楽実践では,音楽を地域資源として認識することが重要であることが示された.また,実践者による積極的な音楽への実体論的/認識論的ローカリティの構築により,音楽と地域が関係づけられることが明らかとなった.

  • 岩佐 佳哉
    2022 年 95 巻 2 号 p. 123-137
    発行日: 2022/03/01
    公開日: 2024/03/16
    ジャーナル フリー

    斜面崩壊の免疫性とは,斜面崩壊が一度発生すると,土層が回復するまでの期間は崩壊が再発しないという考え方である.ある期間において斜面崩壊の免疫性が保たれているかを検証するためには,二度の崩壊が同一の斜面で発生したか否かを検討することが有効である.本研究では,広島県南部を対象として1945(昭和20)年9月の枕崎台風の崩壊の分布を明らかにし,2018(平成30)年7月豪雨の崩壊の分布と比較することで,73年間で斜面崩壊の免疫性が保たれているかを検証した.その結果,枕崎台風では3,787カ所で崩壊が発生したこと,枕崎台風で崩壊が発生した斜面では,平成30年7月豪雨の崩壊のうち1.4%しか崩壊が発生していないことが明らかになった.また,再発した崩壊時の物質の流下距離は枕崎台風の際の崩壊物質の流下距離よりも短い傾向にあった.したがって,枕崎台風に伴って崩壊が発生した斜面では,73年間は斜面崩壊の免疫性が保たれていると考えられる.

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