斜面崩壊の免疫性とは,斜面崩壊が一度発生すると,土層が回復するまでの期間は崩壊が再発しないという考え方である.ある期間において斜面崩壊の免疫性が保たれているかを検証するためには,二度の崩壊が同一の斜面で発生したか否かを検討することが有効である.本研究では,広島県南部を対象として1945(昭和20)年9月の枕崎台風の崩壊の分布を明らかにし,2018(平成30)年7月豪雨の崩壊の分布と比較することで,73年間で斜面崩壊の免疫性が保たれているかを検証した.その結果,枕崎台風では3,787カ所で崩壊が発生したこと,枕崎台風で崩壊が発生した斜面では,平成30年7月豪雨の崩壊のうち1.4%しか崩壊が発生していないことが明らかになった.また,再発した崩壊時の物質の流下距離は枕崎台風の際の崩壊物質の流下距離よりも短い傾向にあった.したがって,枕崎台風に伴って崩壊が発生した斜面では,73年間は斜面崩壊の免疫性が保たれていると考えられる.
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