本稿は,高齢化が進む過疎山村において活動継続の岐路にある無居住寺院を取り上げ,檀家や代務住職による維持とその限界を検討した.事例として取り上げた山梨県早川町における寺院の無居住化は,集落の過疎化にともなって1960年代から進行した.これまで無居住寺院の維持と管理に関わる日常的な見回りや見守りは近隣檀家によって担われてきたが,集落の小規模・高齢化によって困難となっている.また無居住寺院では,建造物の老朽化も懸念されている.ひとたび自然災害や獣害等によって損傷を受ければ,少数となった檀家では修復費用を捻出できずに放置され,朽廃する可能性があった.一方,代務住職は年中法要や葬祭,檀家回りを通じて寺檀関係の維持に努めていたが,空間的に分散居住する檀家には対応できず,近隣檀家に対応するのみにとどまっていた.これらのことから,無居住寺院の維持には限界が生じていることがわかった.