地理学評論
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大阪平野南部の溜池灌漑,とくに樫井川流域について
竹内 常行堀内 義隆
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1959 年 32 巻 11 号 p. 567-579

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抄録
大阪平野の南部は日本で灌漑用溜池の最も多い地域の1つであるが,その理由にこの地域は瀬戸内式気候で雨が少いからであるとするきわめて単純な意見が,日本の地理書にしばしば見られる.著者はこの意見を批判し,以下の見解をとつた.すなわちこの地域の諸川はいずれも集水流域面積が狭く,流域内に雨を降らせる高い山地もない.しかも水田適地の面積が広いので,その水田化は河川灌漑のみでは不可能であつた.また浅井戸による地下水利用に適さない洪積台地が広いので,地下水灌漑で広く補うことも困難であつた.しかし滲透量の少い土質の低い洪積台地や,これをふちどる侵蝕の進んだ古い台地や丘陵には溜池適地があるので,この地域では溜池が発達した.
この地域の溜池には貯水の困難を思わせるものが多いので,著者はこれらの貯水方法に興味をもち,堺市東方の北部台地,槇尾川流域,樫井川流域を選んで,貯水方法に関連してそれぞれの特色を明らかにした.とくに樫井川流域では,溜池の立地に有利で,優先的に樫井川から引水貯溜できる古い台地の溜池群と,貯水の困難な平地の溜池群,貯水の困難な平地の皿池群,山間丘陵の溜池群に分け,それぞれの灌漑区域について,水利の問題の諸性質を考察した.
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