地理学評論
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北海道の新しい地質時代の地殻運動
阪口 豊
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1959 年 32 巻 8 号 p. 401-431

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抄録

北海道の全域にわたつて発達する海岸段丘は北海道における最も重要な地形的特徴である.しかしながら,これらの段丘の高度の変化,その意義,段丘形成の時代について総合的な研究を行つたものはいなかつた.海岸は侵蝕基準面の変化に対し最も敏感であり,段丘によつてしられる旧汀線の高度は地殻運動の海岸における変位量を直接示すものである.このような観点に立つて,筆者は新しい地質時代の地殻運動の特徴,造構造運動との関係,段丘面形成時代の編年について論じた.
対象地域は地体構造の1単元である北海道主部である.筆者は羽幌地方に分布する築別,苫前の2段の段丘を選んだ.これら段丘の高度は海抜70~50mと60~30mである.北部北見山地の海岸では2つの旧汀線高度は一様で,それぞれ海抜80mと40mである.この値を基準高度として, C面形成後T面形成開始まで, T面形成後現在まで, C面形成後現在までの3つの旧汀線高度変位曲線を作成した.
北海道の地形的特徴は蝦夷山系に対する千島弧の会合によつて形成された.千島弧の造地形的活動は中新世に始まつた.筆者は北海道中央部を東西に走る千島弧内部に1つの剪断線を推定した.新第3紀に北海道の地塊は全体として西方へ変位したが,しかもその地塊の南半は剪断線に沿つて著しく西へ動いた.この運動の結果石狩炭田に推し被せや過褶曲が,千島弧内部には雁行配列の褶曲が形成された.さらにいくつかの著しい地形的異常が内陸や周辺の海底にみられる. i)苫小牧南方の日本海溝の1ブランチは北方へ石狩低地帯から天塩沖の大陸棚と武蔵堆の間の海盆に延びる. ii)襟裳岬周辺大陸棚の西斜面は旭川凹地帯に続く. iii)釧路南方の海底谷は屈斜路カルデラを通り網走北方の大陸斜面あるいは能取推定断層線に続いている.これらの地形的構造線はほとんど平行し,蝦夷山系方向をとつている.旧汀線高度の変位量の大きいところはこれらの構造線の通過するところに当つている.すなわち千島弧の活動は新しい地質時代にもかなり活発であつた.
段丘堆積物の花粉分析によると, T面形成時代にかなり寒冷な気候が推定される.襟裳岬付近のT段丘堆積物からマンモス象の臼歯が発見され,北大の湊正雄教授はこの堆積物をWürm氷期に対比している. C面形成時代の気温は今より数度低かつたと推定されまた新旧洪積世の境界付近にさらに寒冷な気候の時代が推定される.

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