抄録
(1) 八代市金剛干拓地(以下金剛干拓と略記)は農地法適用による国営事業として造成された. (2) 干拓造成後の入植者選定にあたつては,国(農林省の出先機関である熊本農地事務局)と地元県との話し合いによつて,県外から27世帯(うち長野20, 鹿児島7) と県内から143世帯が多数の希望者1)の中から選ばれた. (3) この干拓は純粋の農業的土地利用として発足した. (4) 昭和32年 (1957) を初年度とする入植者の農業経営は,第2年目までは整地工事や台風被害などの特殊事情で,第3年目 (1959) になつて漸く結果を収めることができた. (5) 台風被害をさけるための土地利用として水稲の早期栽培や二期栽培が大巾にとり入れられた. (6) 耕地利用率は二期作を計算に入れても123%で,熊本県の176%, 八代郡の203%, 八代市の236%2)に対比して著しく低い.特に裏作率24%は極端に低率である. (7) 裏作作物に何をとり入れて農業経営を高い水準に安定させるかの問題は,入植者たちにとつてはもちろんのこと,ひろく新干拓地農業経営上の重要問題である筈で,本干拓でもまだ試作の毅階にあるとみられるが,近接地帯の作付方式と入植者たちの出身地関係が関連しているようである. (8) 労働力の相対的不足は入植者の家族構成3)事情によるもので, 14歳未満の幼令者率が44%を示している.この幼令者層の成長はやがて労働人口率の増大をもたらす必然性を約束するが,当面の対処法としては機械化にもとめられている.その購入方法や資金調達方法にも興味深いものがある.