地理学評論
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狩野川流域における山地崩壊の分布とその発生機構
市瀬 由自
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1960 年 33 巻 3 号 p. 122-129

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抄録

狩野川台風によつて発生した山崩れ,土石流は,中新世以降激しい火山活動が継続して来たグリン・タフ地域における山地崩壊の諸性質を示すものである.これは伊豆半島が (1) 地質岩石の構造や分布状態が複雑な地域であること, (2) 半島を構成する地質岩石の一部が激しく変質または風化を受け,軟弱となつていること, (3) しばしば大規模な火山活動や地震が発生して,火山体の破壊や地震断層の生成およびそれに伴なう地辷り,山崩れ,亀裂の発生などの地変が繰返されて来たために山地崩壊を起し易い素因を含んでいること,などによるものである.そしてこれらの素因と局地性豪雨の性質とが結びついて,つぎに述べる性質の山崩れや土石流が発生している.すなわち (A) 異種岩石の境界附近より発生する山崩れ(これは素因の第1と関聯をもつもので,上下の岩層の水に対する物理的性質の差異によるものである). (B) 風化土層の剥落による山崩れ(これは素因の第2と関聯をもつもので,生産される土砂も小礫,粗砂,粘土などの細粒のものが多くなつている.), (C) 古い時代の山崩れおよび土石流(これは素因の第1,第2,第3と深い関聯をもつもので,その構成物質,形成過程からみても土砂礫の結合が緩くなつている.そのためこれらの不安定な堆積物の一部が地たり性崩壊や再崩壊を起して多量の石礫を河床に供給している), (D) 漢岸侵蝕と土砂礫の流出(洪水流による側侵蝕や土石流の発生によつて多量の土砂礫が河床に供給されるとともに,下流域では上述した各種の崩壊によつて供給された火山性細粒噴出物が多量に堆積した.)

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